「カイロプラクティック」よりも早く日本に導入された手技療法
オステオパシーは1874年にアメリカの医師アンドリュー・テイラー・スティル博士により発表された徒手医学です。
オステオパシーとは、関節・筋肉・筋膜・内臓機能等のバランスを整えることで、身体の様々な不調を改善させる手技(手で行なう)調整法です。
アメリカでは、年間5万人もの人々がその恩恵を受けている立派な医学ですが、日本では情報不足であまり知られていません。
「カイロプラクティック」という療法は、日本でもポピュラーでよく知られていますが、実はオステオパシーが日本に伝わったのはカイロプラクティックよりも以前で、明治末期の1910年頃と言われています。
しかし、オステオパシーという言葉を使わずに「整体術」として紹介された為、正確な名称や理論、技術が伝わりませんでした。
日本に再びオステオパシーの技術が伝わり始めたのはここ15年くらい前からで、現在では海外からたくさんの情報と最新のテクニックが導入されています。
オステオパシーとカイロプラクティックは、自然治癒力を引き出すことと手技による施術がメインであることや、実際に見た目も理論的にも近いテクニックがいくつか存在するので、その違いを説明するのはなかなか難しいものです。
体の構造と機能の異常(歪みや硬さなど)は体循環に悪影響を及ぼします。
特に背骨に問題があると、正常な神経伝達等が阻害され、筋力や骨だけでなく、体内循環の低下などの形で様々な症状となって身体に現れます。
オステオパシーでは「症状」に対して施術を行うのではなく、「症状の元」に対して施術を行ないます。
上記の例で言うと「症状の元」は背骨ということになります。
しかし、オステオパシーの施術は身体を「一つのユニット」として考え、単に背骨だけではなく、身体のあらゆる部分を対象とします。
四肢を含む全ての筋肉、骨格(関節)の調整
内臓を支えている筋肉や靭帯等の調整
内臓自体の可動性や働き
ホルモンバランスの調節
自律神経のバランスの調節
神経系のバランスや流れを調節
頭蓋骨の歪みや動きの調整
体液循環(血液やリンパの流れなど)の調整
痛みなどを感じる情報のの伝達異常の調整
これらを手技療法によって行ない、それぞれの“動き”を正常に戻すことで、体内に本来備わっている防衛力を回復させ、自然治癒力を存分に働かせることが「オステオパシーの最大の目的」です。
身体の機能障害や慢性的な疾患は、筋肉や筋膜の拘縮(以後“筋拘縮”と表記します。拘縮:こうしゅく=長期間収縮し硬くなった状態)に起因する血流不全や、神経障害が原因することのほうが多く、この不良の状態を「体性の機能障害=ソマティック・ディスファンクション」と言い、これは身体が持つ自然治癒力Spontaneous cureが損なわれた状態でもあります。
※体性機能障害=SD(Somatic dysfunction)の定義=「骨格、関節、筋・筋膜、それに付随する血管、リンパ、神経の各構成要素を包含する身体システム(体の骨組み)の機能が障害を受けたり変性された悪化状態」
骨格の変位LESION:リージョン(骨のズレ)や可動性の減少も「骨の問題」ではなく、筋拘縮が骨を引っ張るために発生しており、痛みやシビレもやはり筋拘縮が神経を圧迫することにより起因することが多いのです。
数々のオステオパシーテクニックは、無理やり「もみほぐす」「たたく」「伸ばす」「押し戻す」を行うのではなく、中枢神経に働きかけ「筋拘縮を『自発的に解放』させる」ことを目的とし行われます。
※一過性の筋収縮SPAZM(スパズム)と慢性的な筋拘縮CONTRUCTURE(コントラクチュアー)を別定義します。
また、脳と脊髄を覆う髄膜間を循環する「脳脊髄液の循環不全」(三層の髄膜の外層=硬膜のひずみやゆがみが起因する場合が多い)からも、不定愁訴が生じ、自然治癒力は損なわれます。
健康状態ならば生物は自然治癒力を持ち合わせています。この良い状態を継続していくことを「恒常性の維持=ホメオスターシスHomeostasis」と言います。
身体の構造と機能は相互に影響しあっているので、人体を一つのユニット(単位)と考え、全人体的に捉えてアプローチしていかなければなりません。
「体性機能障害」や「脳脊髄液の循環不全」等を改善し、身体の「自然治癒力の回復」「恒常性の維持」を図ることが、オステオパシーの根本理論なのです。
オステオパシーの基本原則
1.身体は1つのユニット(単位)である。
2.身体は自己治癒能力を持つ。
3.構造と機能は相互に関係し合う。
4.治療は以上3つの基本原理に基づく。
オステオパシーでは、歪みを正すことよりも、身体に本来備わっている可動性とリズムの正常化を重視します。
・全身の各関節と呼吸による肺、肋骨の動き
・脳の律動に伴う頭蓋(縫合)の柔らかな動き
・内臓が持つ各臓器固有の動き
・筋肉・筋膜や内臓支持組織などの動き
全ての動きが密接に関連してこそ、自然治癒力が最大限に発揮されます。
従来の整体のように、その都度歪みを矯正するのではなく(歪むことでバランスを保っていることが多い為、矯正してもまたすぐに歪んでしまいます)、身体が本来持っている“動きの軟らかさ ”を正常に戻すことにより、患者さんがご自身で自らの痛みや不調、歪みを修正できる身体になるよう、施術を行なっていきます。
オステオパシーテクニックの系統分類の仕方は、捉え方により違いますが、ここでは、
①筋骨格神経系、②硬膜系、③内臓系、④ハード手技系、⑤その他
に大別して説明していきます。
①筋骨格神経系アプローチ(軟部組織マニピュレーションSoft tissue
manipulation)
身体の組織で、骨格以外の組織は全て筋肉だといえます(体毛・爪以外)。
内臓も内臓筋という筋肉です。血管・リンパ管等の組織も内臓筋なのです。それに対して身体を動かすために使うのは、骨格筋という筋肉です。この骨格以外の柔らかい組織を総称して「軟部組織」と言います。
血管・リンパ系以外の内臓筋へのアプローチは、「内臓マニピュレーション」で行いますので、ここでは骨格筋および筋膜(筋肉を覆う膜)、血管・リンパ系へのアプローチを「軟部組織マニピュレーション」と位置つけます。
<主な目的>
筋肉・筋膜の拘縮の自立解放
椎骨・骨格矯正(頭蓋・顎関節を含む)
血流不全・リンパ液流不全の改善
神経障害の改善
上記の不全に起因する「痛み」「しびれ」「耳鳴り」「スポーツ障害」「不定愁訴」などの改善
<主要テクニック>
1、筋膜リリース(マイオファッシャル・リリース M.F.R)
2、ストレイン・カウンターストレイン S.C.S
3、筋エネルギーテクニック(マッスルエナジーテクニック)
4、神経・筋テクニック(ノイラー・マッスルテクニック)
②硬膜系アプローチ(中枢神経へのアプローチ)
脳脊髄液(C.S.F)の循環不全および1分間に6~12回行われる、波動循環リズム(C.R.I)=頭蓋仙骨リズムの乱れを「5gの圧」により改善し、横隔膜など体幹隔壁の可動制限を「10gの圧」で解放(リリース)していく、文字通りの「超ソフト手技」。(加圧力は標準値)
<主な目的>
頭蓋底・仙骨底の解放
頭蓋骨・顎関節矯正
横隔膜など体幹隔壁の制限解放
脳脊髄液流・頭蓋仙骨リズムの改善
軟部組織マニュピレーション・内臓マニュピレーションの準備
上記の不全に起因する「痛み」「しびれ」「情緒・ストレス障害」「自律神経系障害」
「聴覚・視覚・嗅覚障害」「リュウマチ性障害」「不定愁訴」などの改善
<主要テクニック>
5、頭蓋仙骨療法
エネルギー指向テクニック(Vスプレット)等を含む
③内臓系アプローチ
ヨーロッパを中心に行われている別名「無血手術:ブラッドレス・オペレーション」と呼ばれる、内臓系への手技アプローチ。内臓も1分間に7~8回という内臓リズムを持っており(横隔膜呼吸リズムは1分間に15~18回位)、このリズムや内臓制限の改善を「20~100gの圧」で図ります。
また、内臓癒着や胆のう内含物除去・胆管排液の改善などを図ります(この手技だけは一部痛みを伴うものもあります)。特に、体表に近い臓器(胃・腸・肝臓・胆のう)に対して使用頻度が高い。
<主な目的>
内臓の「痛み」「機能不全」の改善
内臓制限(内臓可動力、内臓自動力)の改善
内臓反射による、体幹の痛み(腰痛・背部痛など)の改善
<主なテクニック>
6、内臓マニプレーション
④ハード手技系アプローチ
オステオパシーテクニックの中でも、比較的初期から確立していた、主に椎骨骨格矯正のハード手技に分類されるテクニック。(現在のオステオパシーでは「ハード系」の必要は感じないので、当方では基本的に使用しません)
<主な目的>
椎骨および骨格矯正、それに伴う痛みや神経障害等の改善
<主なテクニック>
7、高速低振幅スラストテクニック
⑤その他のアプローチ
未だ科学的解明はなされていないが、原因不明の不定愁訴には「過去の事故などの衝撃エネルギーが体内の筋肉に渦巻くように滞留して抜けきらずに不定愁訴となって苦痛を与える場合がある」と言う仮説の元、体性感情の再念と解放により改善を図るテクニック。
<主な目的>
他のテクニックで改善せず、身体に強い衝撃を受けた経験がある方の「体調不良」
「不定愁訴」の改善
<主なテクニック>
8、体性感情の再念による解放(ソマト・エモショーナルテクニック)
運動器系・・・腰痛、肩こり、寝違え、膝の痛み、むちうち症、首や背中の痛み、スポーツ障害、肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)、頸椎・腰椎椎間板ヘルニア、骨盤の歪み、骨格の歪み、腱鞘炎、顎関節症、関節リウマチなど
神経系・・・手足の痺れ、坐骨神経痛、偏頭痛、歯の痛み、脳血管障害による後遺症、自律神経失調症、不眠、めまい、耳鳴り、神経症、更年期障害、自律神経失調症、不定愁訴など
消化器系・・・便秘、下痢、胃酸過多、腹部膨満感、など
産婦人科系・・・不妊、生理痛や生理不順、月経前症候群、更年期障害,出産前後の腰痛・背部痛・骨盤矯正、子宮筋腫、卵巣嚢腫など
小児科系・・・てんかん、脳性まひ、小児ぜんそく、斜頸、斜視、夜尿症、消化不良など
その他、アトピー性皮膚炎、鼻炎、花粉症などのアレルギー系疾患、気管支炎や喘息などの呼吸器系の疾患、甲状腺の機能障害などの代謝系疾患、内科系疾患など様々な症状を持つ方々が来院されています。
* オステオパシーは現在日本においては西洋医学にとって代わるものではなく補完医療、代替医療としての役割を担っています。重度の疾患をお持ちの方はまずは医師の診断をお受け下さい。その上で補完医療、代替医療として当院をお選びいただく事をおすすめします。